6.能登流・開運 大吟醸 作 波瀬 正吉 平成拾年度製造 雄町純米大吟醸 
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『作 波瀬正吉』というお酒は僕を日本酒好きにさせたお酒。特別な思いがある。
まだ日本酒を本格的に飲み始める前のこと。
いまから20年ほど前、サライという雑誌に「畢竟(ひっきょう)のお酒」という杜氏名がついたお酒の特集が組まれていた。 『中三郎』、『天保正一』などと共に掲載され、偶然、近くの酒屋で買うことができたのが『波瀬正吉』だった。
1升瓶もあったけど、その時はお酒が1万円!?と思ってたくさんのお金を恐くて出すことが出来ず、4合瓶5千円の緑っぽい箱に入った『波瀬正吉』をやっと買った。 
その時飲んだお酒は衝撃だった。マボロシの銘酒と呼ばれる本醸造クラスのお酒やフツーの大吟醸くらいまでは飲んだことがあったけど、明らかに世界が違った。 「うまい」を超えて、品格のようなものがあり、オーラが見えた気がした。
飲んで心が震えるお酒だった。
大吟醸の中でも抜けてしまった味に出会い、初めて体験できるつき抜けた高みは、値段以上に杜氏の「想い」が心に響く至福の瞬間だった。このときの感動を忘れない。
自分は、悲しくても泣かない人間だと思っていた。
おじいちゃん、おばあちゃんなど肉親が亡くなった時も泣かなかった。
仕事や日常生活の些細なことで神経をすりへらすのはつまらない。
いつの間にか自分を鈍くして生きていたのかも知れない。
しかし波瀬杜氏のお葬式で、土井社長(当時)と能登杜氏組合長の弔辞を聞いて、出棺する棺を見たとき。
初めて買った、あの時の『波瀬正吉』の4合瓶の箱が添えられているのが目に入った。
その瞬間、なぜかわからないが涙が溢れ出てきて泣けた。
なんか、心が溶けた。
ああ、俺は『波瀬正吉』が杜氏を含めて大好きなんだなあ、と思った。 「作 波瀬 正吉」は35本だったか相当買ったが、もう残り少なくなってきてしまった。
冷蔵だが、20年古酒となる今では、本来の味とは違っていると思う。
それでも初心を忘れないため、人が集まる機会にお出ししたい。ぬる燗辺りで試してみるのも良いかも。
<データ>
岡山県産雄町、アルコール度数16~17度、雄町93%、山田7%、精米歩合45%、日本酒度+4、1998年3月製造、取出し2013.10月。
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#作波瀬正吉
#波瀬正吉
#開運

感想
乳酸系の香り、少し熟成香。
しかし、味は甘味を感じさせる雄町の良さをそのままにかなり高いレベルで保っていると思われるまとまりだった。むしろ伝の1年熟成くらいの方が熟成感が高く感じた。
参加者で、開運の出品酒を選定するのに立ち会ったことがある方も、状態の良さに驚いていた。
波瀬杜氏、あなたの酒は、20年経っても人を幸せにする酒でした。

今回、提供の一つの方法として、過冷却マイナス15度での提供を行ってみた。
古酒というと、正直、お燗ばかりの提供が多く、面白くない。
郷乃誉から出た27年古酒の生酒「松寿千年翠」を出した時、過冷却で出したら熟成感を抑えるのに非常に有効な手段であったので、再度トライしてみたが、個人的にはやはり行けそうな気がした。


7. NEXT5 純米大吟醸 THE HARVEST2017
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NEXT5が第8弾目となる共同醸造酒。今回は、建築士の田根剛氏とコラボで福禄寿酒造で仕込まれた。この瓶の凹凸は下から上に行くにつれて玄米だったお米が精米40%の酒米になるのを表現するため、実際にお米を張り付けて造ったとのことで、秀逸なデザイン。田根剛氏は、現在パリ在住で、「エストニア国立博物館」コンペにて若干26歳で最優秀賞を受賞し、一躍脚光を浴びることになった若手建築家。近年、東京オリンピック・新国立競技場のデザイン競技ではファイナリストに選ばれ、日本でも大きな話題となった。元々は、プロのサッカー選手を指していたそうで、高校時代にはJリーグのユースチーム(ジェフユナイテッド市原)にも所属していたという異色の経歴の持ち主で、中田英寿の紹介だった、というのもなるほど、と思える。
2015年10月から2016年2月まで行われた21_21DESIGN SIGHT(東京ミッドタウン・ガーデンサイト)で開かれた建築界の巨匠フランク・ゲイリー(ビルバオのグッゲンハイム美術館などが代表作)の展示会のディレクターも務めたとのことで、興味がわいた。
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秋田県五城目町酒米研究会・伊藤正春氏が栽培した「美郷錦」を35%精米した純米大吟醸、2種類の県産酵母を使用したとのことだが、味は一白水成らしく仕上がっているのだろうか。今年度は6500本の生産があり、値段も高額のため、比較的、入手しやすくなっているみたい。 (データ)美郷錦35%精米、アルコール度数15度


#next5
#harvest2017

感想
フタまでがガラス製で出来た、非常にデザイン性の高いボトル。
飲み終わっても、水差しで使おう(笑)。
アミノ酸系の旨味成分のためか、最初、舌の上に粉っぽさを若干、感じたが、温度が少し上がることにより消える。
重厚感ある甘味は、塩味が入ることにより軽やかに感じる。
開封後、1日置いた方がバランス良く感じた。

一緒に、一白水成の鑑評会出品酒 本斗瓶をいただいた。
甘味の押し出しの強さなど、連続性を感じる。完成度の高さ、リンゴ様の凝縮した甘味がサッと引けていく潔さは、キレともに素晴らしい酒だった。
自宅でやった龍力の会に、まだ一白水成が出る前の渡邊さんが福禄寿を持って遊びに来てくれたのが懐かしい(笑)。R瓶も一白水成になったんだ、と感慨深い。


8.而今 大吟醸 斗瓶取り 鑑評会出品酒 2016.11
9.而今 大吟醸 斗瓶取り 鑑評会出品酒 2017.11

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而今も今年で14造り目となる。2015年に「出品酒を垂直で飲む会」が開催されたが、それ以降の2回の.お酒については、来るべき「第2回出品酒垂直の会」か、「名古屋で開催する而今の会」に備えて2年分、貯めて来たが、名古屋 由紀の酒チームが参戦するということで、味を確かめてもらおう。而今を飲める機会が年々、減っているとのことなので、ここで飲んでもらうことに。16年入賞、17年金のあたりの違いも感じられるのか?

なぜか1本追加。差し入れ平成25年(2013年7月)。
<データ>
兵庫県産山田錦40%精米、アルコール度数17度、杜氏 大西唯克(2016,2017とも同じ)

10.高砂 純米大吟醸 松喰鶴
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元々のブランドであった「高砂」を、来年200周年を迎える節目として而今とは異なる挑戦酒として高砂を販売することになった。ラベルには「松喰鶴」を使用、延命長寿の縁起物とのこと、「花半開酒微酔」の落款が押されている。中国・民の時代の洪自誠(こうじせい)という人が書いた「菜根譚」の一節。「花は半開きを見、酒は微酔(ほろ酔い)に飲む。それが最高の趣というものだ。」との意。

このお酒は協会14号を単独で使用している。なんで14号なの?と聞いたところ、単純に14号が好きだから、とのこと。7号、9号では酸がハリすぎる いかにもクラシックな酒になる。6号は平凡、新政だから個性が出ると思う。MK1は発酵力が強すぎて短期醪になる。この酵母はにごりだから旨い、と意外に熱い思い入れを語ってくれました。 <データ>
三重県産山田錦45%精米、アルコール度数16%1、2017.09、協会14号、杜氏 大西唯克

#而今
#出品酒
#垂直
#而今出品酒

感想
而今 大吟醸 斗瓶取り 鑑評会出品酒 平成25年(2013年)の差し入れをいただき、結局、3本での飲み比べとなった。

2016、柑橘系の香りの方が少し強めか。クリア感の高い味に、甘味、全体としてスッキリと飲める印象。最後に、味をしめる程度の苦味。
2017、メロン様の香り、梨などのフルーティな香り。かすかな火冷め香も。アミノ酸系の旨味成分を含むのか、重層的な甘味主体の旨味。もう少し置いてから再度、試してみたい。
H25年、味のり良いと感じる甘味があり、最初の一口の印象では3本の中で好みか。もう一度、飲み直ししたかった。

高砂
メロン、甘い柑橘系の香り、イチゴに近い様なフルーティな14号酵母のきれいな香りが良く出ている。きれいな引けの中に酸味を感じる。2日目になると、鋭角的な甘味を感じた。
これは、山田錦単独×14号の組み合わせだが、新しく山田錦+雄町×9号の無濾過生が出て、コク、深みを感じる全く違う味で面白い。(生の状態良い)
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11.正雪 旨口純米 静系94号 25BY

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静岡県の酒造好適米 誉富士に、再度山田錦をかけたのが、静系酒94号 というお米。
試験醸造用として栽培された中から、神沢川酒造場に配布され、仕込まれました。
誉富士より心白発生率が高くタンパク質は少なく吟醸酒向きとのことですが、香りは穏やかで含むとさっぱりとした印象。味のりは良くキリリとした旨口タイプ。
少量生産の限定品で、27BYを最後に試験栽培自体がすでに終了した米である貴重な1本。
このお酒は、2014.10月、初年度の仕込み25BY。この年は試行錯誤で日本酒度-1.0、酸度1.2で、きれいに仕上がったとのことなので、期待。 <データ>
静系酒94号60%精米、日本酒度-1.0、酸度1.2、2014.10月。
(参考データ)
27BY、アルコール度数16〜17度、日本酒度+4、酸度1.2、静系94号60%精米
他に臥龍梅、杉錦、大村屋、富士錦、初亀などが醸造。

#正雪
#静系
(酒)94号
#試験栽培中止

感想
開封した直後は、酢酸イソアミル、乳酸様、蒸れた様な香りが入り混じる。
甘味を伴ったこっくりした味は、寝かせたことによる味のりか。
リクエストによりお燗にしてみたが、お燗映えしてほっこり落ち着いて飲める酒となった。圧倒的にお燗の方が好印象でした。
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